【本土寺の概要と歴史】
千葉県松戸市にある本土寺(ほんどじ)は、鎌倉時代に日蓮聖人より山号と寺号を授かった由緒ある日蓮宗の霊跡本山で、現在は初夏に境内を埋め尽くす色鮮やかなアジサイや花菖蒲、秋の美しい紅葉が織りなす見事な景観から、別名「あじさい寺」として広く親しまれています。
【歴史と由来】日蓮宗の名刹「あじさい寺」として親しまれる歴史
本土寺の創建年は、鎌倉時代の1277年(建治3年)と750年以上の歴史を持ちます。
本土寺が建つ「平賀(ひらが)」の地は、もともと源氏の名門である豪族・平賀忠晴の屋敷跡でした。 日蓮聖人の熱心な信奉者(檀越)であり、千葉氏の家臣であった領主・曽谷教信(そやきょうしん)が協力し、領内の地蔵堂をこの平賀の地に移築して「法華堂」としました。 日蓮の直弟子(六老僧の一人)である日朗(にちろう)を導師に迎えて開堂供養が行われました。この際、日蓮聖人より直筆の御本尊や霊宝とともに、「長谷山 本土寺」という山号・寺号を授かったことで正式に開山しました。
廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)などにより荒廃しましたが、昭和以降に境内や庭園の大規模な再整備が行われました。失われた広大な敷地を活かして、5万株のあじさいや花菖蒲、楓が植えられ、かつての格式高い中世の風格を残しながらも、現代では多くの人が癒やされる「四季花の寺」として見事に再生を遂げました。
【ご本尊とご利益】十界大曼荼羅がもたらす子授け・安産・病気平癒のご徳
ご本尊は、一尊四士(いっそんしし)と呼ばれる珍しい仏像群を祀っております。
安産・子育て・乳出(子安乳出の日像様):境内にある「像師堂」には、京都開教の祖である日像上人の像が祀られています。日像上人が誕生した際に湧き出たと伝わる「乳出の御霊水(日像菩薩誕生水の井戸)」があり、その水を飲むと病気が治り母乳の出が良くなるという言い伝えから、古くから乳出・安産・子育ての祈願で賑わいました。
開運・厄除・学業増進など:日蓮宗の中心寺院の一つとして、開運招福や所願成就の霊験が高いとされています。
公式の祈願案内では、開運子育日像菩薩や大黒福聚尊天などを対象としたご祈願や、安産・七五三などの特別祈願も受け付けています。
【本土寺の見どころスポット】
【五重塔と鐘楼】境内の入口近くに佇む歴史的建造物

本土寺のある平賀の地出身であり、日蓮聖人の直弟子(六老僧の一人)でもある高僧・日像(にちぞう)菩薩の「650年遠忌(おんき)」を記念して1991年(平成3年)に建てられました。日像菩薩の偉大な遺徳を称え、後世に長く伝えるための記念事業として造立された、比較的新しい現代の塔です。

鐘楼(しょうろう)は、五重塔のすぐ近くに佇む木造の建物です。
ここに吊るされている梵鐘(ぼんしょう)は、1278年(建治4年)の銘文があり、製作年代が明確な梵鐘としては千葉県内で2番目に古い大変貴重な古鐘です。本土寺の創建(1277年)のわずか翌年に造られました。現在は、国指定重要文化財に指定されており、千葉県内でも屈指の歴史的価値を誇る「至宝」として知られています。
【本堂と長廊下】全長約200mに及ぶ圧巻の木造長廊下と荘厳な本堂
境内に入り参道を進んだ奥に位置する、最も重要な祈りの中心地です。

現在の本堂は、最初から「本堂」として建てられたわけではなく、祖師堂(そしどう・宗祖日蓮を祀るお堂)を1882年(明治15年)に移築し、1977年(昭和52年)に拡張しております。江戸時代初期の建築をベースにしながら、日蓮宗の歴史的な節目ごとに形を変えてきた歩みや、特徴的な御本尊など多くの歴史が詰まっています。

境内の西側にある「本堂」から、東側にある「像師堂(ぞうしどう)」までを繋いでいます。途中で「開山堂」や、先ほど解説した「妙朗堂」などを経由しながら、総延長は約200mに及びます。起伏のある境内の地形に沿うように架けられているため、高低差があるのも特徴です。基本的にこの回廊は、僧侶の移動や儀式に使われるための空間であり、通常は一般参拝者が中を歩くことはできません。参拝者は庭園の遊歩道から、この風格ある回廊の外観を眺めて楽しむ形になります。
【花菖蒲園】四季折々の花々と緑が包み込む絶景庭園
本土寺の境内奥に広がる「花菖蒲園(はなしょうぶえん)」は、別名「あじさい寺」と呼ばれる本土寺において、あじさいと並ぶ初夏の主役です。毎年6月になると「回廊(渡り廊下)」のすぐ脇にある菖蒲池を中心に、約5,000本もの花菖蒲が白や紫、薄ピンクの花を一斉に咲かせます。

例年の見頃は、6月上旬〜6月中旬で花菖蒲のほうが、あじさい(6月中旬〜下旬)よりも一足早く見頃を迎えます。両方が一番綺麗に重なる「6月10日前後」がもっとも贅沢な時期と言われています。
【像師堂と乳出の霊水】子授け・安産のご利益を伝えるお堂と霊水井戸
像師堂(ぞうしどう)は、本土寺の境内にある、日蓮宗の傑僧である日像(にちぞう)上人を祀った極めて重要なお堂です。一般的な寺院における「祖師堂(宗祖・日蓮を祀るお堂)」ではなく、本土寺出身の偉大な高僧である日像(像師)の功績を称えて、特別に「像師堂」と名付けられています。

お堂の中には、日像上人が自ら彫刻したと伝えられる木像が本尊として安置されています。この像は「親子相想(おやこあいそう) の像」と呼ばれ、日像上人の深い慈悲の心が表現されています。

像師堂のすぐ近くに霊水井戸があります。日像上人が生まれた際に産湯として使われた井戸と伝わっており、像師堂に鬼子母神が祀られていることとも連動して、現在でも安産や子育てのパワースポットとして信仰されています。
【開運日像菩薩の石像と稲荷堂】境内に点在する由緒ある石像と鎮守社

像師堂前には、身延山へ旅立つ幼き日の日像上人(万寿丸)の姿を模した、立派な石像が建立されています。

稲荷堂(いなりどう)は、像師堂の近くにあります。お寺の山号(長谷山)にちなみ、「長谷稲荷(ちょうこくいなり)」とも呼ばれています。

日蓮宗の宗祖である日蓮聖人の「遠忌(おんき)」を記念して1932年(昭和7年)に勧請されました。お寺の広い境内や修行の場を外敵や災いから守る「鎮守神(護法神)」として、大切に祀られています。
【本土寺 御朱印】

【長谷山 本土寺の現地参拝レポート&評価】
長谷山 本土寺 現地参拝レビュー・評価スコア
| 評価項目 | スコア | 特徴・ワンポイント |
|---|---|---|
| 自然・景観 | (4.5) | 別名「あじさい寺」。初夏には5万株のアジサイと花菖蒲、秋には1,500本の紅葉が映える圧巻の景観 |
| 歴史・由緒 | (4.5) | 鎌倉時代の建治3年(1277年)創建。日蓮宗の由緒ある霊跡本山であり徳川家康公側室・お万の方ゆかりの名刹 |
| 規模 | (4.0) | 仁王門から本堂、五重塔、菖蒲池、宝物殿などが広大な一山に配された見ごたえ十分の境内規模 |
| アクセス | (4.0) | JR常磐線「北小金駅」北口より徒歩約10〜15分。松戸名物の草餅店などが並ぶ参道歩きも楽しめる |
| 静けさ | (3.5) | 紫陽花・紅葉のシーズンは大変賑わうものの、普段は豊かな森に包まれた静穏で厳かな寺域 |
| 御朱印種類 | (3.0) | 基本の「妙法」御首題をはじめ、季節限定の書き置き御朱印や限定御首題などを拝受可能 |
※「あじさい寺」として親しまれる日蓮宗の古刹です。境内に咲き誇るあじさいや菖蒲、見事な紅葉と朱塗りの五重塔が織りなす風景は関東屈指の美しさを誇ります。
現地レポ|実際に訪れた感想
「あじさい寺」としての全国的な知名度が際立つ本土寺ですが、その真価は鎌倉時代の建治3年(1277年)開創という、750年近い歴史を誇る日蓮宗の霊跡本山としての厳かな佇まいにあります。
あじさいや菖蒲の華やかな最盛期が一段落した8月の境内は、観光地の賑わいが嘘のように引けており、お寺が本来持つ「静かに祈りを捧げる聖域」としての清らかで重厚な空気が満ちていました。夏の強い日差しが照りつける中、深く生い茂る青もみじの緑の奥にそびえ立つ五重塔の美しいシルエットや、端正な姿をたたえる妙朗堂が鮮やかに浮かび上がり、思わず息をのむほどの景観美です。
混雑に追われることなく、境内の一基一基の石碑や歴史あるお堂を自分のペースでじっくりと鑑賞しながら散策できるのは、この時期ならではの贅沢な体験と言えます。訪問時はあいにく仁王門が修復工事中でしたので、鮮やかな朱塗りの仁王門の完全な姿と満開のアジサイをあわせて鑑賞しに、次回はぜひ初夏の6月に再訪したいと思います。
【あわせて巡りたい周辺観光スポット】
駒木 諏訪神社、東漸寺、柏神社、布施弁天 東海寺
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