【稲毛神社の概要と歴史】
稲毛神社(いなげじんじゃ)は、神奈川県川崎市川崎区宮本町に鎮座する、川崎の街の守り神として古くから親しまれている神社です。武甕槌神(たけみかつちのかみ)を主祭神として祀り、「勝と和」の御神徳で知られています。江戸時代には東海道川崎宿の総鎮守「河崎山王社」として広く信仰を集めました。
【歴史と由来】欽明天皇の代に創祀され川崎の地を見守り続ける由緒ある古社
創建の年代は詳らかではありませんが、社伝によると、第29代 欽明天皇(在位:539年〜571年)に、東国平定のためにこの地を訪れた軍勢が軍神である武甕槌神を祀ったのが始まりとされています。また、一説には聖武天皇の御代(724年〜749年)に、国司が神託を受けて社殿を造営したとも伝えられています。

公的な確定年号・西暦こそありませんが、伝承をたどると6世紀頃(古墳・飛鳥時代)の起源説から、実物として確認できる樹齢など裏付けられ少なくとも11世紀頃(平安時代)には既に存在していたと考えられます。
当サイトでは、社伝に記載の第29代 欽明天皇の御代(539年〜571年)を「古墳時代」に分類しています。
当初は「武甕槌宮(たけみかつちのみや)」と称されていましたが、平安時代末期から鎌倉時代にかけて、この地域一帯(現在の川崎市や横浜市の一部)を領有した有力武士・稲毛三郎重成(いなげさぶろうしげなり)が自らの氏神として深く崇敬しました。このことから、領内の総鎮守として「稲毛の冠」をいただくようになります。

慶長年間に、徳川家康によって神領の検地が行われ、社領が安堵されました。この江戸時代初期から明治になるまでは「河崎山王社(かわさきさんのうしゃ)」と呼ばれ、公式な記録や広重の浮世絵などにもその名で登場します。慶長6年(1601年)に東海道川崎宿が設置されると、稲毛神社はその宿場町全体の総鎮守として位置づけられました。
明治維新後の神仏分離により、明治3年(1870年)に現在の社名である「稲毛神社」へと改称され、のちに郷社に列せられました。
【ご祭神とご利益】武甕槌神らが授ける勝運・和合・人脈隆盛のご神徳
稲毛神社のご祭神は、主祭神の武甕槌神(たけみかつちのみや)をはじめとする「経津主神(ふつぬしのかみ) 、菊理媛神(くくりひめのかみ)、伊弉諾神(いざなぎのかみ) 、伊弉册神(いざなみのかみ)」の五柱の神々です。
これらが一堂に祀られていることから、古くより「勝と和(かちとわ)」の御神徳(ご利益)を授ける神社として広く信仰されています。
主なご利益は、 必勝祈願、戦勝、事業成就、開運厄除、病気平癒、縁結び、夫婦円満となっております。
【稲毛神社の見どころ&参拝順序】
【参道】市街地の喧騒を離れ清々しい空気が漂う参道

参拝者を最初に出迎えるのが、表参道に堂々とそびえる大鳥居です。
【大銀杏】樹齢千年を誇り生命力を授ける象徴的なご神木

参道を進み、社殿の手前右側に圧倒的な存在感でそびえ立っているのが、稲毛神社のシンボルであるご神木の大銀杏です。樹齢1,000年以上とされ、江戸時代の浮世絵にも描かれた名木です。

昭和20年の川崎大空襲で黒焦げになり、一時は枯死したと思われましたが、数年後に奇跡的に青葉を茂らせて蘇りました。その「不屈の生命力」が信仰を集めています。

幹の周囲を回りながら願い事を唱えると、縁結び・子授け・学問向上の知恵が授かるとされています。また、ご神木の周囲には十二支のブロンズ像が配置されており、自分の干支を撫でてお参りするのも人気です。
【社殿】地域の人々が集い願いを捧げる凛とした拝所

大銀杏の正面に鎮座するのが、昭和38年に再建された力強く美しい社殿です。 昭和20年(1945年)4月15日の川崎大空襲により、それまで建っていた江戸時代の貴重な社殿はすべて焼失してしまいました。しかし、御神体とご神木の大銀杏は奇跡的に戦火を免れ、昭和38年(1963年)に現在の堂々たる鉄筋コンクリート造の社殿が再建されました。

社殿の前に力強く鎮座している青銅製の狛犬は、「天地睨み(てんちにらみ)の狛犬」と呼ばれ、平成3年(1991年)の「御大典(天皇陛下の即位)」を記念して建立されました。左右の狛犬が阿吽(あうん)の呼吸を合わせ、一方は天を、もう一方は地を鋭い眼光で睨みつけています。

この狛犬、奈良県の公式マスコットキャラクター「せんとくん」の生みの親として世界的に知られる彫刻家・籔内佐斗司(やぶうちさとし)氏の手によって制作された貴重なアート作品でもあります。平成3年の建立ということもあり、「せんとくん」よりも前に生まれた“兄貴分”のような存在として、アートファンからも注目を集めています。
【重要な境内社と八末社】歴史的ゆかり深い社と参道脇に佇む末社群
稲毛神社は、本殿に祀られている五柱の神様だけでなく、数多くの境内社(末社・摂社)が鎮座していることでも有名です。

その数は大小あわせて十数社(一説には17社)に及び、川崎エリアの神社の中でも群を抜いています。

和嶋弁財天社(わじまべんざいてんしゃ)は、かつて稲毛神社の境内には広大な「弁天池」があり、その中央の島に祀られていた弁天様です(現在の第一京浜国道のあたりまで小川が流れていたとされています)。「芸能上達」「金運上昇」「商売繁盛」のご利益で親しまれています。

手水舎を過ぎたあたりの参道沿いに、個性豊かな末社が並んでいます。

大鷲神社(おおとりじんじゃ)「商売繁盛」「開運」の神様。稲毛神社では毎年11月にこの大鷲神社の例祭として、川崎に冬の訪れを告げる賑やかな「酉の市」が開催されます。ご祭神は、日本武尊(やまとたけるのみこと)を祀っております。

浅間神社(せんげんじんじゃ) 、堀田稲荷神社(ほったいなりじんじゃ) 、第六天神社(だいろくてんじんじゃ) 、子神社(ねのじんじゃ) 、三峰神社(みつみねじんじゃ) 、御嶽神社(みたけじんじゃ) 、大神宮(だいじんぐう)
【稲毛神社 御朱印】

【稲毛神社の現地参拝レポート&独自評価】
稲毛神社 現地レビュー・評価スコア
| 評価項目 | スコア | 特徴・ワンポイント |
|---|---|---|
| アクセス | (5.0) | 京急本線「京急川崎駅」より徒歩約5分、JR「川崎駅」東口より徒歩約8分と市街地中心部からのアクセスが非常に良好 |
| 歴史・由緒 | (4.0) | 欽明天皇朝の創建と伝わり、鎌倉武士・稲毛三郎重成ゆかりの社であり東海道川崎宿の総鎮守として栄えた格式高い古社 |
| 自然・景観 | (3.5) | 樹齢千年超・戦災から芽吹いた生命力のシンボル「ご神木の大銀杏」と、十二支像や大鳥居が調和する情緒ある境内景観 |
| 静けさ | (3.0) | 川崎の繁華街・市役所に近い好立地のため参拝客が絶えないが、境内に入ると緑の樹木に囲まれ穏やかな神気が満ちる |
| 規模 | (3.0) | 重厚な鉄筋コンクリート造の社殿、天地睨みの狛犬、富士浅間神社などの境内社がバランスよく整った境域構成 |
| 御朱印種類 | (3.0) | 「稲毛神社」の通常御朱印や「勝と和」の神徳を刻んだ朱印、山王祭(川崎山王まつり)や季節限定の朱印が授与される |
現地レポ|実際に訪れた感想
川崎駅から賑やかな繁華街を歩くこと約10分。第一京浜(国道15号線)沿いに突如として現れる石造りの大鳥居が、稲毛神社の入り口です。
一歩足を踏み入れると、さっきまでの車の走行音や駅前の雑踏が嘘のように遠のき、心地よい静けさに包まれます。真っ直ぐに伸びる参道は豊かな木々に覆われており、木漏れ日を浴びながら歩くだけで、心がすっと調えられていくような神聖な空気を感じられます。境内の中ほどで、圧倒的な存在感を放っているのがご神木の大銀杏です。

写真で見るよりもはるかに巨木で、太い幹から力強く伸びる枝葉が、境内を優しく包み込むような包容力を持っています。川崎大空襲の戦火を生き抜いたというその佇まいからは、単なる「古い木」という枠を超えた、凄まじい「生へのエネルギー」が満ちあふれています。
稲毛神社は、ただ歴史が古いだけでなく、戦火からの復興を遂げた「力強い生命力」が今も息づいている場所でした。川崎という大都会の中にありながら、一歩入ればいつでも心にパワーをもらえる、まさに都会のオアシスと呼ぶにふさわしい神社だと思います。
【あわせて巡りたい周辺観光スポット】
若宮八幡宮、川崎大師 平間寺、六郷神社
Kanataの神社・お寺めぐりナビ
